価格破壊は神聖不可侵なこの業界へも及びつつあるのだった!

一般国道20号を山梨県勝沼方から東京方面へと上る。そして有名な笹子トンネルを抜けた先に、そのラーメン屋さんはあった。
コテコテに真っ赤なテント生地に真っ白い文字が躍る。


『うまい ラーメンショップ うまい』


東京の、それも都下に生活拠点を置く者なら誰もが見たことのあるであろう、某ラーメンチェーンの安看板だ。
そこそこの代価で、その後の話題にも上らないような美味しくもなく不味くもないソコソコの味のラーメンを提供する地方拡散型展開を領分とするラーメン店。
なぜそんな所に僕がいたかは今回重要ではない。
問題は、そんな話のネタにもならないラーメン店の話をどうして僕が日記に書きとどめようなどと思ったかである。


通常のラーメンとは一体いくらくらいするものなのだろうか?
新宿で有名な(僕はマズイと思ったけど評判な)麺屋・武蔵は700円程度だったと思う。
北海道ラーメンは具材が豊富なこともあって1000円前後とちょっと高めだが、ふつうに「しょうゆラーメン」を頼むのなら700円あれば充分だし、それ以上だともし不味かったときに精神的ショックが大きいので及び腰になる。
少なくとも僕はなるのだ。


ラーメン業界には脱サラ男が案外アッサリ開店させられてしまう「来るもの拒まず」的なところがある(まぁ、それゆえに淘汰も激しいのだけど。。)ともかく、そんな一攫千金(?)を夢見る山師の含有率がやたらと高い外食産業であるからして、味の方も必ずしもお金を取れるレベルだとは限らない。
消費者である僕らは、常に「このお店はもしかしたら驚くほどマズイかも…」というリスクを背負ってお店のノレンをくぐることを余儀なくされる。
だから見知らぬラーメン店でしょうゆラーメンが700円を超えていたりすると、相当な勇気を必要とされるのだ。
もし900円だった日には、メニューを見た瞬間に2秒ほど心停止すること請け合いだ。
お店側もそれを分かっているから、よほどの有名店・名物店でもないかぎり、大体このあたりの値段を行き来するわけである。


話を戻すが、今日僕が入った件のラーメン店は安いっ!それも鬼のように安い!!
しょうゆラーメン(並)がたった450円である。まるで大学近くの学生ラーメンのごとき値段設定に僕も驚いた。

しかし、真におそるべきはそのお店が軒先に掲げる看板に書かれたサービス内容である(添付写真参照)。

なんと毎週木曜日は並盛りが190円なのだ!!
そうか〜。デフレはこんな山梨の山奥にまで浸透していたかぁ。

しかし、これで儲けが出るのだろうか?店舗は山梨と東京を結ぶ主要幹線道路ではあるが、通るのはダンプか行楽帰りの車ばかりである。安定した集客能力があるとは到底考えられない。そんなラーメン店が掲げるにしては、いかにも命取りになりかねない価格サービスだ。


見たところそれほど客入りもよくない。それでもお店が存続しているということは…

  1. 赤字覚悟の大量出血大サービスをしているか
  2. じつは190円でも利益が(それもかなり)出るほどラーメンの原価とは安いのか


僕としては後者ではないかと睨んでいる。
ではしょうゆラーメンの原価と適正価格とは一体いかほどなのか?
じつはもっと安くてもいいのではないか?
否!安くなくてはおかしいのではないだろうか!?


カップラーメンの値段がコンビニでおよそ税込み156円である。カップラーメンの製法とは基本的には普通のラーメンのソレとおなじである。ただ、最後にフリーズドライ(もしくはオイルフライ)加工をするかどうかの差だけが明確な違いだと言ってもいい。
つまり、カップラーメンの方が保存加工とパッケージングのコストが店舗販売よりもかさむのだ。
それなのに!ああ、それなのに!お店のあの子は700円。やっぱりこの値段設定の方がおかしいのではないだろうか?

もしかしたら「しょうゆラーメン=700円」も、僕らが世界に勝手に思い込まされている「事実不在の常識」のうちの1つなのかも知れない。